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バイオ

目に見えないモノを扱うむずかしさ — 遺伝子工学実習見学

北海道胆振東部地震から約1ヶ月後の10月5日。
バイオテクノロジー学科の1年生は、2年生(遺伝子・生化学コース)の「遺伝子工学実習」を見学に行きました。
 
1年生の「遺伝子工学」という授業では、“生命の設計図”である遺伝子について学んでいます。
しかし「遺伝子って興味はあるんだけど、今ひとつイメージできない・・・」
そんな悩みがついて回るのがこの科目。

ならば、実際にどんなふうに取り扱うのか、授業で学んだことはどんなふうに実践されているのか
確かめに行きましょう!
 
当日、集合時刻は8:55。なんとか遅れずに集まることができました。
廊下で服装を整え、元気よくあいさつをして入室。

 
1年生が見学する実習は「PCR」・・・遺伝子を短時間に大量にコピーする技術です。
本日大量コピーするのは「ヒトの遺伝子」!
“サンプル”を提供したのは2年生の男女2名ずつ、計4名。
あらかじめ、口の中の細胞を採取してそこからDNAを取り出してあります。

今日はそのDNAに含まれる「男女に関わらず誰でも持つ遺伝子」と
「男性のみが持つ遺伝子」二つをPCRでコピーし(「増幅」といいます)、
目的とする遺伝子が増えたかどうか電気泳動で確認します。
DNAは冷凍庫で保存し、実習時にはこんなふうに氷につけておきます。

まず最初に、担当の鈴木先生がPCRの原理や実験の目的、手順を説明します。
配布されたプリントは英語!
声にならない悲鳴を上げながら、じっと鈴木先生を見つめる1年生。
ホワイトボードに書かれる説明や注意点も英語混じりなので聞き逃さないように必死でメモをとります。

1時間説明を聞き、小休止をはさんですぐ実験にとりかかります。
2年生は手際よく試薬や器具を並べ、順番に作業を始めます。
試薬やサンプルを数μLずつ取り出しては、小さな樹脂製の試験管に加えていきます。
その量はようやく見える小さな水玉といったところ。
涙1滴が50μLですから、どのくらい少ないか想像してくださいね。

遺伝子を扱う実験に欠かせないのが、わずかな量の液体を量ることができるマイクロピペットという器具です。
必要な試薬の量に合わせて目盛りを調整し、先端のチップは1回使うごとに捨てていきます。
1年生もマイクロピペットに触れたことはありますが、改めて使い方を習いました。真剣そのものです!

「知っている」と「できる」は大違い。
さらに「たとえば22.5μL量るときは、7.5μLを3回にするんだよ。」と鈴木先生。
???
マイクロピペットで量れる(吸いこめる)量には限界があります。
それを超える量が必要なときは何回かに分けて吸い取ります。
このとき22.5を「10+10+2.5」に分けるのではなく「7.5+7.5+7.5」にしたほうが
実験を効率よく正確に進めることができるというわけです。

試験管に試薬をすべて入れたら全体を混ぜるために「ピペッティング」という操作をします。
さらに、試験管の壁面に付着した液体を集めるために遠心分離器で「フラッシュ」という作業をします。
使い方を説明しながら試験管をセットする2年生を尊敬のまなざしで見つめているところです。

試験管にすべての試薬とDNAを加えたら、「サーマルサイクラー」という機械にセットします。

この機械は94℃→55℃→72℃と一定時間ごとに温度を切り換えてくれるもので、
この温度変化にともなってDNAがコピーされていきます。
「思ったより小さい。」「意外とシンプル。」という感想も。

さて、ここまでで見学は終了です。
 
1年生が退室した後、ほっと一息の2年生。

この後、サーマルサイクラーにセットしたサンプルを電気泳動します。
電気泳動はカギセンのオープンキャンパスで体験できますよ。
 
 
1週間後、1年生の教室に結果が届けられました。
あれ? 予測どおりにDNAが増えていない? そう、実験は思わぬ結果になることもあるのです。
原因は何だろう? どうすれば確認できるだろう? 
自分たちがやり直すとしたらどうする?・・・とことん考察します。
 
レポートの感想は
・1つの操作にこれだけ時間がかかるとは。難しそうだが、やってみたい。
・教科書で学ぶだけでなく実際に見ることができてよかった
・プリントが全部英語で驚いた
・試薬は高価なのでたいせつに使いたい
・私たちと違ってとても手際がよい。速い!
などなど。
刺激的で有意義な2時間となりました。みなさん、お疲れさまでした。
来年の今頃は、今の1年生が進級して次の1年生を迎えます。成長が今から楽しみです。